高齢者は何で亡くなっているのか。その構成は、この10年でどう変わったのか。
アイメトリカは、厚生労働省「人口動態統計(確定数)」を政府統計API(e-Stat)から取得し、65歳以上に絞って独自に集計しました。最新の令和6年(2024年)までの10年間の結果をお伝えします。
調査の方法
- 対象:65歳以上(5歳階級 65〜69歳から100歳以上までを合算)
- 期間:2015年(平成27年)〜2024年(令和6年)の10年間
- データ:厚生労働省「人口動態調査 人口動態統計 確定数 死亡」
上巻 死因(死因年次推移分類)別にみた性・年齢(5歳階級)・年次別死亡数 - 取得方法:e-Stat APIで統計表ID 0003411659 を取得し、65歳以上の階級を機械的に合算
公表値をそのまま集計しており、推計や補正は行っていません。
結果1:全死亡の92.0%が65歳以上
2024年の死亡総数は1,605,378人。このうち65歳以上は1,476,198人で、全死亡の92.0%を占めます。10年間の推移は次のとおりです。
| 年 | 全死亡数 | 65歳以上 | 65歳以上の割合 |
|---|---|---|---|
| 2015年(平成27年) | 1,290,510 | 1,147,567 | 88.9% |
| 2016年(平成28年) | 1,308,158 | 1,170,745 | 89.5% |
| 2017年(平成29年) | 1,340,567 | 1,209,046 | 90.2% |
| 2018年(平成30年) | 1,362,470 | 1,233,204 | 90.5% |
| 2019年(令和元年) | 1,381,093 | 1,253,839 | 90.8% |
| 2020年(令和2年) | 1,372,755 | 1,246,982 | 90.8% |
| 2021年(令和3年) | 1,439,856 | 1,314,242 | 91.3% |
| 2022年(令和4年) | 1,569,050 | 1,439,600 | 91.7% |
| 2023年(令和5年) | 1,576,016 | 1,445,868 | 91.7% |
| 2024年(令和6年) | 1,605,378 | 1,476,198 | 92.0% |
10年間で全死亡は314,868人(+24.4%)増えましたが、65歳以上はそれを上回る328,631人(+28.6%)の増加です。割合も88.9%から92.0%へ、3.0ポイント上がりました。日本人の死亡は、ほぼ高齢者の死亡と言える状態になっています。
結果2:2024年の死因順位(65歳以上・実数)
- 1位 悪性新生物<腫瘍> 340,257人(23.0%)
- 2位 心疾患(高血圧性を除く) 211,093人(14.3%)
- 3位 老衰 206,819人(14.0%)
- 4位 脳血管疾患 93,883人(6.4%)
- 5位 肺炎 78,186人(5.3%)
- 6位 不慮の事故 40,273人(2.7%)
- 7位 腎不全 28,659人(1.9%)
- 8位 糖尿病 13,324人(0.9%)
結果3:10年間の増減
- 老衰:84,800人 → 206,819人(+143.9%)
- 不慮の事故:31,032人 → 40,273人(+29.8%)
- 腎不全:23,573人 → 28,659人(+21.6%)
- 心疾患:179,646人 → 211,093人(+17.5%)
- 悪性新生物:313,881人 → 340,257人(+8.4%)
- 脳血管疾患:101,893人 → 93,883人(-7.9%)
- 肺炎:117,713人 → 78,186人(-33.6%)
分析1:「老衰」が2位に迫っている
最も注目すべき動きです。2位「心疾患」と3位「老衰」の差が、急速に縮まっています。
- 2015年 心疾患179,646人 - 老衰84,800人 = 差94,846人
- 2020年 心疾患190,868人 - 老衰132,397人 = 差58,471人
- 2022年 心疾患217,454人 - 老衰179,464人 = 差37,990人
- 2023年 心疾患215,325人 - 老衰189,839人 = 差25,486人
- 2024年 心疾患211,093人 - 老衰206,819人 = 差4,274人
10年前は9万人以上あった差が、4,274人まで縮まりました。老衰が増え続ける一方、心疾患は2022年をピークに減少に転じています。この傾向が続けば、近い将来に2位と3位が入れ替わる可能性があります。
分析2:10年間で順位が動いたのは1回だけ
各年の上位5死因の並びは、次のとおりです。
- 2015〜2016年 がん > 心疾患 > 肺炎 > 脳血管疾患 > 老衰
- 2017〜2024年 がん > 心疾患 > 老衰 > 脳血管疾患 > 肺炎
10年間で唯一の変動が、2017年の3位と5位の入れ替わりです。それ以外の順位は一度も動いていません。
分析3:2017年の変動は「統計の数え方」の変更の影響が強い
ここが、公開データを扱ううえで最も注意すべき点です。2017年に肺炎が急減した(116,103人→94,828人)のは、医療の改善だけが理由ではありません。厚生労働省は次のように説明しています。
- 「平成29年の『肺炎』の低下の主な要因は、ICD-10(2013年版)(平成29年1月適用)による原死因選択ルールの明確化によるものと考えられる。」
- 「『誤嚥性肺炎』は平成29年より死因順位に用いる分類項目に追加している」
つまり2016年以前と2017年以降では、死因の数え方そのものが変わっています。この注記を踏まえずに前後を単純比較すると、実態を見誤ります。
分析4:肺炎は2021年を底に増加へ転じている
肺炎は10年で33.6%減りましたが、直近の動きは逆です。
- 2019年 93,383人
- 2020年 76,574人(大きく減少)
- 2021年 71,650人(この10年の最少)
- 2022年 72,413人
- 2023年 74,064人
- 2024年 78,186人(3年連続で増加)
2020〜2021年の落ち込みは、感染対策が広く行われた時期と重なります。その後は3年続けて増加しており、減少傾向は既に終わっています。
分析5:「誤嚥性肺炎」を合わせると、肺炎は減っていない
ここまでの「肺炎」には、誤嚥性肺炎が含まれていません。2017年に独立した分類項目として分けられたためです。実際に何人が肺炎で亡くなっているのかを見るには、両者を合わせる必要があります。
厚生労働省「人口動態統計 死因(死因簡単分類)別」から、65歳以上について両者を集計しました。
- 2017年 肺炎94,828人 + 誤嚥性肺炎35,335人 = 130,163人
- 2018年 肺炎92,568人 + 誤嚥性肺炎38,053人 = 130,621人
- 2019年 肺炎93,383人 + 誤嚥性肺炎39,953人 = 133,336人
- 2020年 肺炎76,574人 + 誤嚥性肺炎42,228人 = 118,802人
- 2021年 肺炎71,650人 + 誤嚥性肺炎48,904人 = 120,554人
- 2022年 肺炎72,413人 + 誤嚥性肺炎55,415人 = 127,828人
- 2023年 肺炎74,064人 + 誤嚥性肺炎59,445人 = 133,509人
- 2024年 肺炎78,186人 + 誤嚥性肺炎62,905人 = 141,091人
「肺炎」単独では2017年から-17.6%ですが、合算すると+8.4%で増加しています。とくに2020年の118,802人を底に、4年連続で増え続け、+18.8%となりました。
増加を牽引しているのは誤嚥性肺炎です。2017年の35,335人から2024年は62,905人へ、+78.0%。統計上、肺炎で亡くなる高齢者の44.6%が誤嚥性肺炎とされています。
ただし、この44.6%という数字は実態より小さい可能性があります。厚生労働省の資料には、次の記載があります。
- 「肺炎患者の約7割が75歳以上の高齢者。また、高齢者の肺炎のうち、7割以上が誤嚥性肺炎。」
(厚生労働省 第2回 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ 資料2-1/平成28年9月2日)
臨床の実態としては7割以上が誤嚥性肺炎とされる一方、死亡統計上は44.6%にとどまります。この差が生じるのは、両者を明確に切り分けることが難しいためです。誤嚥が原因であっても、死亡診断書に「肺炎」とだけ記載されれば、統計上は肺炎に計上されます。
つまり、統計に現れている62,905人は、誤嚥に起因する死亡の一部にすぎないと考えられます。合算した141,091人という数字も、その大半が誤嚥と無関係ではない可能性があります。
分析6:合算すると、肺炎は脳血管疾患を上回る
分類を分けたまま見ていると、肺炎は5位です。しかし合算した場合、順位は変わります。
- 1位 悪性新生物<腫瘍> 340,257人
- 2位 心疾患 211,093人
- 3位 老衰 206,819人
- 4位 肺炎+誤嚥性肺炎 141,091人
- 5位 脳血管疾患 93,883人
65歳以上の死亡の9.6%を占め、脳血管疾患(93,883人・-6.5%で減少中)を大きく上回ります。減っている死因と増えている死因が、順位表の上では隣り合っている状態です。
分析7:85歳以上では、9人に1人が肺炎で亡くなっている
年齢階級別に見ると、傾向はさらにはっきりします。2024年、各年齢階級の死亡数に占める「肺炎+誤嚥性肺炎」の割合です。
- 65〜69歳 2,517人 / 3.8%
- 70〜74歳 6,567人 / 5.2%
- 75〜79歳 13,085人 / 7.0%
- 80〜84歳 24,858人 / 9.4%
- 85〜89歳 36,280人 / 11.3%
- 90〜94歳 36,130人 / 11.8%
- 95〜99歳 18,071人 / 11.0%
- 100歳以上 3,583人 / 8.7%
65〜69歳では3.8%ですが、85歳を超えると11%台に達します。およそ9人に1人が肺炎で亡くなっている計算です。年齢が上がるほど、肺炎は身近な死因になります。
この調査から見えること
今回の集計から、2つのことが確認できました。
ひとつは、死因の比重が特定の疾患から「老衰」へ移っていること。10年で2.4倍に増え、2位に迫りました。明確な疾患名がつかないまま最期を迎えるケースが増えているということです。
もうひとつは、肺炎は減っていないということ。分類の変更により統計上は減ったように見えますが、誤嚥性肺炎を合わせると4年連続で増加し、脳血管疾患を上回る規模になっています。85歳以上では死因の1割超を占めます。
この2つに共通するのは、予兆が分かりにくいという点です。老衰にははっきりした病名がつきません。誤嚥は、むせ込みのない「不顕性誤嚥」として気づかれないまま進むことがあります。どちらも、日々のわずかな変化に気づけるかどうかが分かれ目になります。
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出典・データの取得元
- 厚生労働省「人口動態調査 人口動態統計 確定数 死亡」(政府統計コード 00450011)
上巻 死因(死因年次推移分類)別にみた性・年齢(5歳階級)・年次別死亡数及び死亡率(人口10万対)/統計表ID 0003411659
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003411659 - 厚生労働省「人口動態調査 人口動態統計 確定数 死亡」
下巻 死亡数,死因(死因簡単分類)・性・年齢(5歳階級)別/統計表ID 0003411699
(誤嚥性肺炎を含む集計に使用)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003411699 - 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei24/index.html - 厚生労働省「第2回 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」資料2-1(平成28年9月2日)
「2.高齢化に伴い増加する疾患への対応について」(高齢者の肺炎に占める誤嚥性肺炎の割合)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000135467.pdf - 厚生労働省「平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況」結果の概要(分類変更に関する注記)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai17/dl/kekka.pdf
本記事の数値は、上記の政府統計を2026年8月2日に取得し、当社が集計したものです。
「65歳以上」は5歳階級(65〜69歳〜100歳以上)の合算値です。構成比は65歳以上の死亡総数に対する割合です。
分析1〜4の死因分類は「死因年次推移分類」、分析5〜7は「死因簡単分類」に基づきます。
いずれの分類でも「肺炎」に誤嚥性肺炎は含まれません。誤嚥性肺炎は2017年(平成29年)から独立した分類項目のため、2016年以前の数値はありません。