介護の現場で「人が採れない」と言われて久しくなりました。実際のところ、あと何人足りないのか。働いている人の年齢はどうなっているのか。
アイメトリカは、厚生労働省と介護労働安定センターが公表しているデータを集計し、介護業界の労働人口の現状を整理しました。

調査の方法

  • 介護職員数・必要数:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」
  • 人手不足・外国籍労働者:介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査」
    (調査基準日 令和6年10月1日/事業所調査 回収9,044件・回収率52.9%)
  • 年齢構成・地域差:厚生労働省「介護人材確保の現状について」(令和7年6月9日 社会保障審議会福祉部会 参考資料3)
    (同資料内の出典は、有効求人倍率が厚生労働省「職業安定業務統計」、75歳以上人口が国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成30年3月推計)」)

いずれも公表値をそのまま用い、推計や補正は行っていません。

結果1:2040年度に、あと57万人

厚生労働省の推計では、必要な介護職員数は次のように増えていきます。

年度介護職員数(必要数)2022年度との差必要な増加ペース
2022年度(令和4年度)約215万人
2026年度(令和8年度)約240万人+約25万人年 約6.3万人
2040年度(令和22年度)約272万人+約57万人年 約3.2万人

2022年度の約215万人が出発点です。2040年度までに約57万人を上積みする必要があります。

結果2:65.2%の事業所が「人手不足」

現在の状況です。従業員の過不足について、事業所の回答は次のとおりでした。

  • 大いに不足 10.0%
  • 不足 21.2%
  • やや不足 34.0%
  • 不足と回答した事業所の合計 65.2%(前年度から+0.5ポイント)

このうち「大いに不足」「不足」という深刻な回答は31.2%。約3社に1社にあたります。

職種別の不足感

職種によって、状況は大きく異なります。その職種がいる事業所を100とした割合です。

職種大いに不足不足やや不足不足感の合計
訪問介護員29.8%28.3%25.3%83.4%
介護職員13.5%23.0%32.6%69.1%
看護職員6.0%12.3%25.9%44.2%
介護支援専門員5.4%10.4%18.7%34.5%
PT・OT・ST等2.9%8.1%20.3%31.3%
サービス提供責任者6.3%10.1%14.5%30.9%
生活相談員2.2%7.1%15.6%24.9%
全体でみた場合10.0%21.2%34.0%65.2%

突出しているのが訪問介護員の83.4%です。しかも「大いに不足」と「不足」を合わせた深刻な層が58.1%と、6割近くに達します。次に高い介護職員(69.1%/深刻な層36.5%)と比べても、水準が違います。

一方で、生活相談員(24.9%)やサービス提供責任者(30.9%)は3割前後です。不足しているのは、利用者に直接ケアを提供する職種という構図がはっきり表れています。なお、前年度と比較するといずれの職種でも不足とする事業所の割合は上昇しています。

結果3:訪問介護員の4人に1人が60歳以上

働いている人の年齢構成です。介護職員(施設等)と訪問介護員では、様相が大きく異なります。

年齢介護職員(施設等)訪問介護員
20歳未満0.2%0.2%
20〜29歳8.7%5.9%
30〜39歳20.3%13.9%
40〜49歳28.2%25.2%
50〜59歳25.0%28.4%
60〜64歳8.9%13.1%
65〜69歳5.2%6.9%
70歳以上2.5%5.7%

合計すると、訪問介護員は60歳以上が25.7%。4人に1人が60代以上です。一方で30歳未満はわずか6.1%にとどまります。
介護職員(施設等)でも60歳以上は16.6%、30歳未満は8.9%です。

結果4:外国籍労働者を受け入れている事業所は15.8%

  • 受け入れていない 78.8%
  • 受け入れている 15.8%(前年度から+2.4ポイント

受け入れは着実に増えています。ただし、受け入れ側の課題も明確です。

  • 利用者や他の従業員との意思疎通が難しい 36.5%
  • 受け入れのための住宅や寮などの確保が困難 23.6%
  • 外国籍労働者の仕事上のサポート役の負担が大きい 22.4%

結果5:人手不足が最も厳しいのは、高齢化率が低い都市部

地域差も見ておきます。厚生労働省「職業安定業務統計」による介護関係職種の有効求人倍率は、令和7年4月時点で全国平均3.77倍。全職業の1.08倍に対し、約3.5倍の開きがあります。

都道府県別に見ると、意外な傾向が現れます。カッコ内は有効求人倍率の全国順位、伸び率は75歳以上人口の2015年→2025年の倍率です。

都道府県(求人倍率の順位)75歳以上人口(2025年)75歳以上の割合2015年比
埼玉県(1位)120.9万人16.8%1.56倍
千葉県(2位)107.2万人17.5%1.52倍
神奈川県(3位)146.7万人16.2%1.48倍
愛知県(4位)116.9万人15.7%1.45倍
大阪府(5位)150.7万人17.7%1.44倍
東京都(11位)194.6万人14.1%1.33倍
鹿児島県(45位)29.5万人19.5%1.11倍
秋田県(46位)20.9万人23.6%1.11倍
山形県(47位)21.0万人20.6%1.10倍
全国2,180.0万人17.8%1.34倍

求人倍率が高い(=採用が難しい)上位は埼玉・千葉・神奈川・愛知・大阪。いずれも都市部です。逆に最も低いのは山形・秋田・鹿児島でした。

高齢化率で見ると関係は逆転します。75歳以上の割合が最も高いのは秋田県の23.6%ですが、求人倍率は46位です。埼玉県は16.8%と全国平均を下回りながら、求人倍率は1位でした。

分析1:「57万人増やす」ではなく「増やし続ける」

2040年度までに57万人という数字は、一度の採用強化で埋まるものではありません。2026年度までは年6.3万人、その後も年3.2万人のペースで純増させ続ける必要があります。

しかし現実には、65.2%の事業所が既に人手不足の状態にあります。採用の努力を続けても、なお足りないというのが現在地です。

分析2:訪問介護は「今いる人」の高齢化が進んでいる

訪問介護員は、不足感が最も高く(58.1%)、かつ60歳以上が25.7%、30歳未満が6.1%という構成です。上の世代が退いたときに、それを埋める世代が控えていません。

人手不足は「採用が難しい」という問題であると同時に、数年後に確実に訪れる退職の問題でもあります。

分析3:外国籍の受け入れは、現場の負担と表裏にある

外国籍労働者の受け入れは+2.4ポイントと伸びています。ただし課題の上位には、意思疎通の難しさ(36.5%)サポート役の負担(22.4%)が並びます。

人を増やしても、受け入れる側の負担が増えれば、現場は楽になりません。「頭数を揃える」だけでは解決しない構造がここにあります。

分析4:都市部の課題は「高齢化率」ではなく「増えるスピード」

なぜ高齢化率が低い都市部で採用が難しいのか。答えは増加のスピードにあります。

埼玉県の75歳以上人口は10年間で1.56倍。秋田県は1.11倍です。秋田県はすでに高齢化が進みきっており、需要の増え方は緩やかです。一方、埼玉県は今まさに急増している最中で、サービスの体制づくりが追いついていません

厚生労働省も「介護分野の有効求人倍率は、地域ごとに大きな差異があり、地域によって高齢化の状況等も異なる」「各地域の特性に応じた対応が必要」としています。全国一律の施策では対応しきれないということです。

この調査から見えること

4つの数字が、同じ方向を指しています。

  • 必要な職員は2040年度に約272万人(+57万人)
  • 現時点で65.2%の事業所が人手不足
  • 訪問介護員の60歳以上が25.7%、30歳未満が6.1%
  • 介護関係職種の有効求人倍率は全国平均3.77倍(全職業の約3.5倍)

人を増やす前提そのものが、成り立ちにくくなっています。だとすれば、一人あたりが担う負担を減らすほかありません。記録や申し送りにかかる時間を削り、経験の浅い職員でも異変に気づける仕組みを整える。テクノロジーが担うべきなのは、この部分です。

アイメトリカは、呼吸音をはじめとする生体音をAIで解析する見守りアプリ「AiTone」や、介護施設に特化した勤怠管理システムの共同開発を通じて、現場の負担軽減に取り組んでいます。

出典

本記事の数値は、上記の公表資料を2026年8月2日に取得し、当社が整理したものです。
年齢構成の合計値(60歳以上・30歳未満)は、公表されている各階級の値を当社で合算したものです。