介護の現場のDX(デジタル化)は、どの地域で、どの種類の事業所で進んでいるのか。現場は次に何を求めているのか。そして、DXは利用者の安全とケアの質の向上にどうつながろうとしているのか。

アイメトリカは、厚生労働省が公表している「介護現場の生産性向上に関するダッシュボード」の都道府県別データと、介護労働安定センター「令和7年度 介護労働実態調査」(2026年7月公表)から、介護DXの導入状況を集計しました。ICT・介護ロボットの都道府県別の導入率、ケアプランデータ連携の広がり、現場で使われている機器と次に導入を考えている機器、そして導入の効果と課題を整理しています。

調査の方法

  • 都道府県別のICT・介護ロボット等の導入率:厚生労働省「介護現場の生産性向上に関するダッシュボード」(デジタル庁サイトで公開、2026年4月24日更新)の公開データ(CSV)。2025年6月末時点
  • 都道府県別のケアプランデータ連携システムの活用状況:同ダッシュボードの公開データ(CSV)。全国値は2026年3月末時点
  • 生産性向上推進体制加算の取得割合・委員会の設置割合:同ダッシュボードの主要指標
  • 現場で使われている機器・導入を検討している機器・導入の効果と課題:公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度 介護労働実態調査」事業所調査(2025年10月1日時点、介護テクノロジーの設問の回答8,899事業所)。比較には令和6年度の同調査を用いました
  • 国の制度:厚生労働省「生産性向上推進体制加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例等の提示について」(介護保険最新情報 Vol.1236)
この記事の「導入率」について

都道府県別の「ICT・介護ロボット等の導入率」は、介護サービス情報公表システムの「事業所の特色」に入力のある事業所のうち、「生産性向上のための業務改善の取組」として「タブレット端末やインカム等のICT活用や見守り機器等の介護ロボットやセンサー等の導入による業務量の軽減」を記載している事業所の割合です。全国では152,880事業所のうち47,693事業所(31.2%)が該当します。事業所の申告にもとづく値で、記載していない事業所の中にも機器を使っているところはあると考えられます。厚生労働省によると、令和6年度の介護報酬改定で項目の要件が変わっており、新しい要件のデータはまだ集計されていないため、旧要件での集計です。

ダッシュボードの「施設」は介護老人福祉施設(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護療養型医療施設・特定施設(介護付き有料老人ホームなど)・介護医療院、「通所」はデイサービス・デイケアなど、「訪問」は訪問介護・訪問看護・訪問入浴などです。

ケアプランデータ連携システムの値は、事業所ではなく市区町村を単位とした割合です。介護労働実態調査の値は約9,000事業所への標本調査で、都道府県ごとの回答数が少ないため、本記事では全国とサービスの種類別の値を用いています。

調査結果

結果1:ICT・介護ロボットの導入率は全国31.2%、都道府県で約1.7倍の差

ICT・介護ロボット等の導入率が最も高いのは鳥取県の41.0%、次いで宮城県40.0%、千葉県39.9%でした。最も低いのは奈良県の23.6%で、鳥取県とは約1.7倍の差があります。47都道府県の中央値は30.3%です。

順位都道府県すべて施設通所訪問
1鳥取県41.0%56.4%38.5%39.3%
2宮城県40.0%53.8%35.2%37.7%
3千葉県39.9%53.9%41.9%37.3%
4京都府37.4%48.2%38.3%34.2%
5栃木県37.1%53.6%33.7%33.1%
6茨城県36.2%43.4%38.1%38.0%
7岐阜県34.6%44.2%35.9%32.7%
8福井県34.0%44.8%28.6%30.5%
9愛知県33.7%46.2%34.4%30.9%
10東京都33.5%45.1%31.8%36.0%
11沖縄県33.4%43.6%34.4%37.1%
12和歌山県33.1%53.6%33.1%28.6%
13熊本県32.8%41.9%34.4%29.8%
14青森県32.7%40.7%29.1%31.1%
15岡山県32.4%38.8%36.9%26.8%
16島根県32.0%45.1%29.6%26.1%
17山形県31.5%38.8%32.4%34.5%
18徳島県31.1%48.6%33.0%22.4%
19埼玉県30.9%41.2%29.1%32.0%
19滋賀県30.9%36.9%34.5%30.2%
21神奈川県30.8%39.5%29.7%34.1%
22新潟県30.6%38.8%31.0%30.3%
23群馬県30.3%39.3%30.8%27.8%
23大阪府30.3%43.3%31.3%29.1%
25石川県30.1%38.2%33.3%29.7%
26静岡県30.0%37.3%31.4%26.9%
27兵庫県29.6%40.5%28.9%29.2%
28大分県29.5%39.0%27.9%29.3%
29秋田県29.4%37.3%25.6%31.0%
30広島県29.3%35.3%28.9%28.1%
30鹿児島県29.3%38.4%29.2%23.3%
32福島県28.9%42.9%27.5%25.8%
33香川県28.5%35.0%28.7%28.9%
34山梨県28.4%35.8%31.6%29.1%
35佐賀県27.9%32.7%27.8%26.9%
36福岡県27.8%35.5%28.2%28.5%
37岩手県27.5%40.6%27.4%25.8%
37長野県27.5%41.3%25.1%22.2%
39三重県27.4%36.5%25.1%25.0%
39高知県27.4%39.8%27.6%19.8%
41富山県27.0%40.8%22.9%28.2%
42北海道26.9%33.4%25.3%28.4%
43山口県26.6%29.9%28.1%26.1%
43愛媛県26.6%36.0%29.1%23.3%
45長崎県26.5%34.6%24.6%23.5%
45宮崎県26.5%40.4%26.9%22.5%
47奈良県23.6%31.4%28.9%22.4%

※ 2025年6月末時点。順位は「すべて」の高い順。厚生労働省「介護現場の生産性向上に関するダッシュボード」の公開データ(CSV)から作成。

結果2:すべての都道府県で、施設の導入率が通所・訪問を上回る

サービスの種類別に見ると、47都道府県すべてで「施設」の導入率が最も高くなっています。47都道府県の中央値は、施設40.4%、通所29.6%、訪問29.1%です。

  • 施設:最も高いのは鳥取県56.4%、千葉県53.9%。最も低いのは山口県29.9%
  • 通所:最も高いのは千葉県41.9%。最も低いのは富山県22.9%
  • 訪問:最も高いのは鳥取県39.3%。最も低いのは高知県19.8%

施設と訪問の差が最も大きいのは徳島県(26.2ポイント)、和歌山県(25.0ポイント)で、小さいのは山口県(3.8ポイント)、山形県(4.3ポイント)でした。

結果3:ケアプランデータ連携は82.1%の市区町村に届いたが、複数の事業所で使われているのは20.6%

ケアプランデータ連携システムは、ケアマネジャーと介護サービス事業所の間で、ケアプランや実績のやりとりを紙やFAXではなくデータで行うための、国の仕組みです。全国では、管内の事業所が1つ以上利用している市区町村(普及自治体)が82.1%に達した一方、管内の事業所の3割以上が利用している市区町村(複数事業所活用自治体)は20.6%にとどまります。

都道府県別では、複数事業所活用自治体の割合が最も高いのは富山県の60.0%、次いで山形県57.1%、福井県52.9%、鳥取県52.6%でした。佐賀県・島根県・奈良県・沖縄県は0.0%です。

順位都道府県複数事業所活用自治体の割合普及自治体の割合
1富山県60.0%100.0%
2山形県57.1%88.6%
3福井県52.9%94.1%
4鳥取県52.6%84.2%
5熊本県44.4%86.7%
6岐阜県40.5%90.5%
7滋賀県36.8%89.5%
8福島県35.6%67.8%
9京都府34.6%84.6%
9宮崎県34.6%84.6%
11秋田県32.0%92.0%
12石川県31.6%100.0%
13静岡県31.4%94.3%
14岩手県30.3%87.9%
15徳島県29.2%91.7%
16青森県27.5%80.0%
17愛知県25.9%98.1%
18長崎県23.8%95.2%
19新潟県23.3%90.0%
19和歌山県23.3%76.7%
21東京都22.6%90.3%
22大分県22.2%94.4%
23山口県21.1%84.2%
24愛媛県20.0%95.0%
24群馬県20.0%91.4%
26長野県19.5%58.4%
27山梨県18.5%74.1%
28高知県17.6%64.7%
29北海道17.3%55.9%
30千葉県14.8%94.4%
31大阪府14.0%95.3%
32香川県11.8%76.5%
33鹿児島県11.6%69.8%
34茨城県11.4%95.5%
34宮城県11.4%85.7%
36岡山県11.1%85.2%
37兵庫県9.8%97.6%
38広島県8.7%95.7%
39栃木県8.0%92.0%
40埼玉県7.9%100.0%
41三重県6.9%89.7%
42神奈川県6.1%84.8%
43福岡県1.7%93.3%
44佐賀県0.0%95.0%
44島根県0.0%63.2%
44奈良県0.0%59.0%
44沖縄県0.0%56.1%

※ 順位は複数事業所活用自治体の割合の高い順(同率の場合は普及自治体の割合の高い順に表示)。普及自治体=管内の事業者が1つ以上利用している市区町村、複数事業所活用自治体=管内の事業者の3割以上が利用している市区町村。厚生労働省「介護現場の生産性向上に関するダッシュボード」の公開データ(CSV、2026年4月24日更新)から作成。

結果4:記録のソフトは7割に普及、見守りセンサーは施設で67%

介護労働実態調査で「日常的に利用している」と答えた事業所の割合を、サービスの種類別に整理しました。記録のためのソフトは種類を問わず広く使われており、施設ではベッドセンサーなどの見守り機器、訪問ではタブレット・スマートフォンの利用が目立ちます。

区分機器・機能全体施設系(入所型)居住系通所系訪問系
記録・連絡介護ソフト:ケア記録・ケアプランの入力・保存72.2%83.2%64.0%67.4%74.7%
タブレット・スマートフォン:ケア記録の入力53.7%58.7%52.9%46.8%60.4%
シフト管理・勤怠管理・給与計算など47.4%53.8%43.7%38.9%57.0%
職員間の報告・連絡・相談(グループウェア)41.1%47.1%31.6%32.3%51.4%
見守り・コール無線ナースコール23.8%48.5%37.5%25.5%13.5%
ベッドセンサー(マット型・内蔵型)19.4%66.7%41.4%8.0%7.1%
カメラ型以外のセンサー(天井・壁・床・ドアなど)10.6%24.4%29.3%7.1%4.0%
カメラ型センサー(モニターカメラ)9.1%23.0%15.3%8.1%4.6%
インカム・ネックスピーカー6.0%18.4%8.6%4.4%3.0%
介護ロボット入浴の支援6.7%19.7%9.7%6.2%2.4%
移乗の支援(マッスルスーツなど)1.9%9.1%1.4%0.7%0.9%

※「日常的に利用している」と答えた事業所の割合。回答事業所数は全体8,899、施設系(入所型)1,137、居住系967、通所系2,383、訪問系2,722。通所系は調査票の「施設系(通所型)」。介護労働安定センター「令和7年度 介護労働実態調査」事業所調査(資料編 表17-1-1〜12)から作成。

結果5:施設が考える直近のDX

介護労働実態調査で、「導入を検討している」と答えた施設系(入所型)の事業所の割合を、高い順に並べました。上位には、職員どうしの連絡(インカム、タブレットでの業務連絡)、見守り(カメラ型センサー)、記録の音声入力が並び、既存の拡張が挙げられます。

順位機器・機能導入を検討している日常的に利用している
1インカム・ネックスピーカー32.5%18.4%
2カメラ型センサー(モニターカメラ)29.8%23.0%
3タブレット・スマートフォン:音声を文章に変える機能25.8%14.6%
4介護ソフト:音声を文章に変える機能25.4%12.9%
5タブレット・スマートフォン:職員間の業務連絡23.0%34.8%
6介護ロボットのデータを一元的に扱う機能22.3%13.5%
7カメラ型以外のセンサー(天井・壁・床・ドアなど)20.1%24.4%
8利用者の移動を支援する介護ロボット19.6%8.8%
9入浴を支援する介護ロボット18.3%19.7%
10排泄を支援する介護ロボット17.6%1.9%

※ 施設系(入所型)1,137事業所の回答。「導入を検討している」はまだ導入していない事業所の回答で、回答事業所全体に占める割合。全24項目のうち上位10項目。介護労働安定センター「令和7年度 介護労働実態調査」事業所調査(資料編 表17-1-1〜12)から作成。

結果6:「介護の質の向上」に効果を感じる事業所は、1年で4.7ポイント増加

介護テクノロジーの導入効果について、「効果がある」「やや効果がある」と答えた事業所の割合です。介護の質の向上に効果があるとした事業所は、前年度の35.4%から40.1%へ4.7ポイント上がり、5項目の中で最も大きな伸びとなりました。施設系(入所型)では58.4%と、6割近くが効果を認めています。テクノロジーは、ケアの質を高める手段として実感され始めています。

効果の項目令和6年度令和7年度差令和7年度 施設系(入所型)
介護の質の向上35.4%40.1%+4.758.4%
昼間の業務負担の軽減49.4%53.8%+4.476.8%
夜間の業務負担の軽減44.6%47.2%+2.674.2%
業務の活性化39.6%43.3%+3.753.3%
勤務時間(残業など)の短縮38.4%42.7%+4.351.6%

※「効果がある」「やや効果がある」の合計。導入している機器が1つもない事業所は、導入した場合に予想される効果を回答しています。「夜間の業務負担の軽減」は「夜間業務がない」を除いて算出。調査票では「介護の質の向上」を「利用者に対して、尊厳確保・虐待防止、QOL確保、自立支援に対する配慮等、質の高い介護サービスを提供することによって、その満足度を高めること」と定義しています。介護労働安定センター「介護労働実態調査」令和6年度・令和7年度の事業所調査から作成。

結果7:コストに次ぐ課題は、「現場で使いこなせるか」

導入に際しての課題(複数回答)で最も多いのは「導入コストが高い」(68.1%)ですが、次いで多いのが「現場職員が技術的に使いこなせない可能性が高い」(37.2%)でした。コストに加えて、現場の職員が無理なく使い続けられるかどうかが大きな壁になっていることがうかがえます。ケアの合間に使う機器は、操作に手間がかかれば、それ自体が新たな負担になってしまいます。誰でも、すぐに、同じように使えることが求められているといえます。

導入に際しての課題割合
導入コストが高い68.1%
現場職員が技術的に使いこなせない可能性が高い37.2%
投資に見合うだけの効果がない28.4%
どのような機器があるかわからない27.3%
事業所規模や介護現場の実態に適う機器がない25.6%
導入の推進役となりうる機器に詳しい職員が事業所にいない23.0%
事業所にあった機器がどれか選定できない18.3%
導入の効果をあげるために、どのような手順を踏んでいけばよいかわからない14.3%
特に課題はない10.5%

※ 回答事業所数8,899。導入している機器が1つもない事業所は、導入していくうえで考えられる課題を回答しています。介護労働安定センター「令和7年度 介護労働実態調査」事業所調査から作成。

分析

分析1:上位の県は、施設・通所・訪問のどれでも導入が進んでいる

結果1の都道府県別の導入率を、サービスの種類ごとの順位と並べました。上位3県(鳥取県・宮城県・千葉県)は、施設・通所・訪問のいずれでも全国10位以内に入っています。特定のサービスだけが全体を押し上げているのではなく、地域全体で導入が進んでいると考えられます。

順位都道府県すべて施設通所訪問
1鳥取県41.0%56.4%1位38.5%2位39.3%1位
2宮城県40.0%53.8%3位35.2%7位37.7%3位
3千葉県39.9%53.9%2位41.9%1位37.3%4位
…
45長崎県26.5%34.6%43位24.6%46位23.5%40位
45宮崎県26.5%40.4%24位26.9%41位22.5%43位
47奈良県23.6%31.4%46位28.9%29位22.4%44位

※ 2025年6月末時点。上位3・下位3の都道府県を掲載(全47都道府県は結果1の表)。各列の下の数字は、そのサービスでの47都道府県中の順位。厚生労働省「介護現場の生産性向上に関するダッシュボード」の公開データ(CSV)から作成。

一方で、47都道府県のうち34都道府県は導入率27〜34%の範囲に収まっており、中央値は30.3%です。

この差は、都市の規模では説明できません。東京・大阪・名古屋・福岡の大都市圏の8都府県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・愛知県・大阪府・兵庫県・福岡県)の平均は32.1%、それ以外の39道県の平均は30.7%で、差は1.4ポイントにとどまります。人口が最も少ない鳥取県が1位である一方、福岡県は36位です。また、都道府県が設ける介護の生産性向上のワンストップ窓口は2026年1月末時点で45都道府県に設置されていますが、未設置の茨城県も36.2%で6位に入っており、窓口の有無とも単純には結びつきません。

差を生んでいるのは、地域の事業所どうしで先行事例が共有されているか、導入を後押しする人がいるかといった、統計には表れにくい要因である可能性があります。そして、1位の鳥取県でも導入を記載している事業所は約4割です。どの地域にも、テクノロジーでケアを支える余地はまだ大きく残っています。

※ 平均は各都道府県の値の単純平均。ワンストップ窓口の設置状況は同ダッシュボード(2026年1月末時点)。

分析2:機器の導入と、データ連携の広がりは、別々に進んでいる

ICT・介護ロボットの導入率(結果1)と、ケアプランデータ連携の複数事業所活用自治体の割合(結果3)を都道府県ごとに比べると、両者の相関はほとんど見られませんでした(相関係数0.16)。たとえば鳥取県はどちらも上位ですが、千葉県は導入率が3位である一方、複数事業所活用自治体の割合は14.8%です。

地域ブロック別に見ると、その違いがよく分かります。

地域ICT・介護ロボット等の導入率ケアプランデータ連携:普及自治体ケアプランデータ連携:複数事業所活用自治体
北海道・東北北海道・青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島31.0%79.7%30.2%
関東茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川34.1%92.6%13.0%
中部新潟・富山・石川・福井・山梨・長野・岐阜・静岡・愛知30.7%88.8%33.7%
近畿三重・滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山30.3%84.6%17.9%
中国・四国鳥取・島根・岡山・広島・山口・徳島・香川・愛媛・高知30.5%82.3%19.1%
九州・沖縄福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄29.2%84.4%17.3%

※ 地域の区分はダッシュボードの表示に合わせました。値は各地域に含まれる都道府県の値の単純平均で、事業所数や市区町村数による重み付けはしていません。

関東は、ケアプランデータ連携を使う事業所がある市区町村の割合(普及)は92.6%と最も高い一方、管内の事業所の3割以上が使っている市区町村の割合(複数事業所活用)は13.0%と最も低くなっています。事業所の多い都市部では、一部の事業所が使い始めても「3割」に届きにくいことが一因と考えられます。反対に中部は、複数事業所活用が33.7%と最も高くなっています。

機器の導入は事業所の判断で進められますが、データ連携は、ケアマネジャーと相手の事業所がそろって使わなければ効果が出ません。地域の中で一緒に取り組めるかどうかが、広がり方の違いになっていると推察されます。

分析3:施設で進み、訪問で遅れる理由

結果2のとおり、すべての都道府県で施設の導入率が最も高くなっています。結果4・5と合わせると、施設では夜間を含めて多くの利用者を少ない職員で見守るための機器(ベッドセンサー、ナースコール、インカム、見守りカメラ)が、すでに使われていることが分かります。

一方、訪問介護は職員が1人で利用者の自宅を回る働き方で、施設に据え付ける見守り機器を使う場面はほとんどありません。訪問系で使われているのは、記録や連絡のためのタブレット・スマートフォンが中心です(結果4)。訪問の導入率が低いのは、遅れというよりも、訪問の現場に合う機器がまだ少ないことの表れとも考えられます。課題の上位に「事業所規模や介護現場の実態に適う機器がない」(25.6%)が挙がっていることとも合っています。

分析4:これからの介護DXに欠かせないのは、利用者の安全とケアの質

介護DXは、職員の負担を減らすことから広がってきました。しかし介護の本来の目的は、利用者が安全に、その人らしく暮らし続けられるよう支えることにあります。国の制度も、DXの目的を、利用者の安全・ケアの質の確保と、職員の負担の軽減の両方に置いています。

令和6年度の介護報酬改定では、「利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会」の設置が義務付けられました(3年間の経過措置あり)。委員会の名前のとおり、最初に掲げられているのは利用者の安全と介護サービスの質です。厚生労働省の通知では、生産性向上推進体制加算を取得する事業所に対し、見守り機器などを導入したうえで、この委員会で次のことを確認するよう求めています。

  • 見守り機器等から得られる離床の状況、睡眠状態やバイタルサイン等の情報をもとに、多職種で利用者の状態が維持されているか確認すること
  • 介護機器の使用に起因する介護事故やヒヤリ・ハット事例(介護事故には至らなかったが、介護事故が発生しそうになった事例)の状況を把握し、原因を分析して再発防止策を検討すること
  • 職員の心身の負担、負担が過度に増えている時間帯、休憩時間や時間外勤務の状況を確認すること

本通知は、DXを用いて職員の負担を軽減しつつ、ケアの質を総合的に高めることが目的とうかがえ、また、上位区分の生産性向上推進体制加算(Ⅰ)を取得するには、職員の業務時間の短縮だけでなく、利用者の満足度など(WHO-5などによる評価)を、導入の前後で確かめる必要があります。

厚生労働省のダッシュボードによると、この委員会を設置している事業所の割合は2024年の8.1%から2025年には40.1%に上がりました。生産性向上推進体制加算の取得割合は、2025年5月末時点で全介護事業者の24.3%、特養では30.8%、老健では34.2%です。利用者の安全とケアの質をデータで確かめる委員会を設置している事業所の割合は、1年で約5倍になりました。

介護の質の向上に効果を感じる事業所が増えていること(結果6)も、この流れと合っています。

人手が限られるなかで、急変の前、体調の変化にいち早く気づき、職員の間で共有し、未然に防ぐこと。DXの評価の物差しは、「どれだけ時間が減ったか」から、「利用者の安全とケアの質を高められたか」へと移りつつあると考えられます。

この調査から見えること

今回の集計から、3つのことが確認できました。

ひとつは、介護DXの進み具合には地域差があることです。ICT・介護ロボットの導入率は都道府県で約1.7倍の差があり、ケアプランデータ連携は、使われている市区町村は8割を超えたものの、多くの事業所で使われている市区町村は2割にとどまります。

もうひとつは、DXは施設から進み、その中心は見守りと連絡だということです。日々の手間を減らし、利用者に向き合う時間を生み出すための導入が進んでいます。

そして、DXに求められる役割が、負担の軽減から、利用者の安全とケアの質の向上へと移りつつあることです。介護の質の向上に効果を感じる事業所は1年で4.7ポイント増え、安全とケアの質を確かめる委員会を設置している事業所の割合は約5倍になりました。国も、ヒヤリ・ハットの把握や利用者の状態の確認を、生産性向上の取組の一部として求めています。

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介護DXの全国の動向は、介護業界のDX動向調査【令和6年(2024年)統計】でも整理しています。

出典

※ 本記事の数値は、上記の公表資料を2026年10月15日に取得し、当社が集計したものです。分析のうち「考えられる」「推察される」としている部分は、当社の解釈です。